【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
埼玉県川口市で6月、介護支援専門員の女性(63歳)が訪問先の住宅で殺害された事件で、埼玉県警は殺人の疑いで、自ら首を切り死亡した住人の無職の男(被害者ケアマネの担当利用者の息子・60歳)を容疑者死亡のまま書類送検した。その男は犯行後自ら警察に通報しており、その際に「お金をだまし取られたから殺そうと思って首を切った」と話していたが、そのような金銭トラブルは確認されておらず、本件は男の妄想が引き起こした事件である可能性が高まった。
この事件を受けて厚生労働省は、介護事業者に対しカスタマーハラスメント対策を強化するよう通知するとともに、再発防止策として利用者宅を複数人で訪問する際の経費を補助すると自治体に通知するなどした。また横浜市では、居宅介護支援の運営基準条例の解釈通知のQ&Aに新しい項目を加え、「サービス担当者会議等で客観的に『特段の事情』があると認められる場合は、自宅以外(通所介護事業所や短期入所施設等)でのモニタリング実施を可とします。さらに、自宅以外においてもモニタリングが困難と認められる場合においては、本人・家族への電話確認やサービス事業所への聞き取り等により居宅サービス計画の実施状況の把握に努めることで減算に該当しない取り扱いとすること」と通知するなど、さまざまな自治体で新たな対策が講じられている。
しかし、これらはいずれも訪問面接の際に危険性があると事前に察知して初めてとることができる対策だ。だが、川口市の事件の被害者はそのような危険性を全く感じていない状態で利用者宅を訪問し、警戒心のないままいきなり被害に遭ったと思われる。従って事件後に厚労省などが新たに通知した対策も取りようがない事件であったと思われる。
このようにある日突然、利用者の家族らが被害妄想を抱き、何の前ぶれもない状態で訪問時に突然強行に及ぶ事件を完全に防ぐことは極めて困難だ。だからこそ、訪問サービスに携わる関係者は利用者や家族が被害妄想を抱くリスクをできるだけ減らすような対策も日常的に講じておく必要があるのではないだろうか。その対策の一つが、利用者との心理的距離感を適切にとるということだ。
■心理的距離が近過ぎると誤解が生じるリスク大
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次回配信は9月30日を予定しています
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